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母の味

母がおかずを保冷バッグに詰めて持ってきてくれた。
その中に入っていたかぼちゃの煮物。


食べて、ああこれは母の味だ、と思った。





私は実家を出るまで全くと言ってよいほど料理をしたことがなかったのだけれど、一人暮らしを始めて自炊するようになった。


今はインターネットにいくらでもレシピが公開されているから、狭いキッチンでスマートフォン片手に料理をしていて。
そこで見たレシピ通りに作ると、どうも味が濃く感じた。でもどこをどう引き算すればよいかわからないというレベルの初心者だったので、慣れるまで何度かその味の濃いレシピで作った。


それが、かぼちゃの煮物。


何度か作るうちにだんだん自分好みの味になっていって、自分の作る料理の中では一番おいしいと思えるようになった。




薄味で、水分が少なくて、好きでも嫌いでもない料理。

久しぶりに母の作ったものを食べたとき、私にとってはかぼちゃの煮物ってこういうものだったな、と感じた。



母のものがおいしくないというわけではない。
そうじゃないんだけど。



私の口に入るものが、今までの私の身体を作ってくれたものからどんどん変化しているのだと気付いて急に怖くなった。



母から料理のことを何一つ教えてもらおうとしなかった自分を悔やんだし、何か一つでもいいから 母が作るのと同じレシピで料理をしたい、覚えたい、という気持ちが湧き上がってきた。



今度の連休、母に料理を教えて、と頼んでみよう。たぶん、全部適当だよ、と笑われるのだろうけど。

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